「私の椅子」の選択には、座り心地とデザインに加えてもう一つ、「似合う」という条件がつくことになる。一般にインテリアを構成する家具は住み手の個性を反映すべきなので、似合った方が良いのは椅子に限ったことではない。しかし家具の中でも椅子、とくに「私の椅子」は、座る人が決まっているだけに「その人に似合うかどうか」ということが重要なポイントになるような気がする。これはたぶん、椅子が衣服と同じように身体のすぐ周りにあるからで、着心地にあたるものが座り心地であるとすれば、椅子にはまた、衣服と同じようにその人に似合ったり似合わなかったりするという性格が濃いのではないか。
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ぼくがイームズのラウンジ・チェアと別の理由で敬遠しているのは、これもデザイン史上の傑作として知られているジオーポンティのデザインによる「スーパーレジェーラ」という名の椅子である。これは安楽椅子ではなく、食卓などで使う肘掛なしの木製椅子だが、堅くしなやかなヒッコリー材を使い、現代化学の成果である接着剤の強度を生かして部材をギリギリまで細くしたため、小指一本で持ち上げられるほど軽い。そして、その軽さ、細さの限界を追求して生まれた形態には近代合理主義の精髄とも言うべき厳しい美しさがあって、思わず惚れぼれと見つめてしまうのだが、自分の家で使うかどうかということになると、その厳しさがちょっと息苦しく感じられるのだ。